商談はある。提案書も出している。
でも、受注にならない。
失注理由を聞くと、「価格が合わなかった」「タイミングが悪かった」「社内で見送りになった」と返ってきます。
そのまま顧客・案件の管理表へ「価格」と入れて終わると、次にできることは値下げくらいです。
本当に知りたいのは、顧客の社内で誰が、何を理由に、どの段階で止めたのかです。
法人営業では、目の前の担当者だけが意思決定しているとは限りません。提案の良し悪しだけでなく、顧客側の購買プロセスを見ないと、失注の原因を取り違えます。
「価格で負けた」は、原因ではなく最後の要約かもしれない
価格が理由になる案件はあります。
ただ、同じ金額でも買われる案件と買われない案件があります。
- 効果を社内で説明できなかった
- 予算を持つ人へ価値が伝わっていなかった
- 現場が運用負担を心配した
- 法務や情報管理の確認で止まった
- 他社の方が社内資料を作りやすかった
- そもそも今やる合意が取れていなかった
この状態でも、担当者は「価格が厳しかった」と説明することがあります。
価格は話しやすいからです。
顧客社内には、違う心配を持つ人がいる
一つの案件でも、関係者によって見る点が違います。
- 利用者:本当に使いやすいか、仕事が増えないか
- 推進担当者:社内説明と進行を自分が担えるか
- 部門責任者:売上、品質、納期へ効くか
- 経営企画・財務:費用対効果と優先順位は妥当か
- 法務・情報管理:契約や情報漏洩の危険はないか
- 最終承認者:会社として今やる理由があるか
同じ提案資料を全員が同じ基準で見るわけではありません。
『法人営業 勝ちパターン大全』で紹介された2,676人の購買経験者調査では、最終決裁者が最も強い実質的影響力を持つ案件は16.7%でした。残りでは、現場や管理部門など別の関係者が強く影響しています。
だから、「決裁者へ会えたか」だけでも足りません。
誰が何を心配し、誰が止められるのかを見る必要があります。
顧客が今どの段階にいるかを記録する
法人の購買は、次のような段階で進みます。
- 課題認識:今の状態を変える必要があるか考えている
- 情報収集:方法、相場、事例を調べている
- 要件整理:何を実現し、何を条件にするか決めている
- 比較:複数の会社や方法を評価している
- 発注決定:社内承認と契約を進めている
情報収集段階の顧客へ、いきなり正式見積もりを求めても進みません。
逆に、要件整理が終わった後から入ると、判断基準そのものは競合と顧客が先に作っている可能性があります。
自社の営業段階だけでなく、顧客の購買段階を顧客・案件管理へ持ちます。
商談ごとに残す九つの項目
次の情報を、担当者の記憶ではなく案件へ残します。
- 顧客が最初に感じた課題
- 今やる必要がある理由
- 何もしない場合の損失
- 関係者とそれぞれの関心
- 予算を持つ部門
- 比較している代替手段と競合
- 判断基準
- 社内承認の手順と期限
- 次の行動、担当、日付
全部を最初の商談で聞く必要はありません。
分からない項目を分からないままにせず、次に確認することとして残します。
顧客担当者が社内で売れる資料を作る
営業が提案して終わりではありません。
顧客側の担当者は、その提案を社内へ説明します。
その時に必要なのは、会社紹介より次の情報です。
- なぜ今やるのか
- 何がどれくらい変わるのか
- いくらかかり、いつ回収できるか
- 他の方法と何が違うか
- 導入時の負担と危険をどう抑えるか
- 小さく試して止められるか
顧客の担当者が上司や経営会議へそのまま使える形にします。
資料の返信が速い会社が選ばれることがあるのも、担当者の社内業務を進められるからです。
提案前の議論で、判断基準へ入る
比較段階になってから提案の見た目だけを競うより、課題認識や要件整理の段階から議論した方が顧客を理解できます。
この時、売り込むのではなく、次を一緒に整理します。
- 現在どこで損失が起きているか
- 誰の仕事が変わるか
- 成功を何で測るか
- 何を小さく試せるか
- どんな条件なら投資しない方がよいか
要件が固まっていない顧客へ入る考え方は、AI受託開発会社に何を頼むべきかでも扱っています。
失注後は「選ばれなかった理由」ではなく「決まり方」を聞く
失注理由を聞く時、「なぜ弊社ではなかったですか」と聞くだけでは、角の立たない答えになりやすいです。
次のように、購買プロセスを聞きます。
- 最終的に何を最も重視したか
- 検討途中で判断基準が変わったか
- どの部門の意見が強かったか
- 選ばれた方法は何が評価されたか
- こちらの提案で社内説明しにくかった点は何か
- 検討をやめた場合、何が原因だったか
競合名を教えてもらえなくても、決まり方は聞けることがあります。
失注理由を、行動へつながる分類にする
「価格」「タイミング」「競合」の三つだけでは、改善できません。
たとえば、次のように分けます。
- 課題の緊急性が低かった
- 予算化前に提案した
- 必要な関係者へ会えなかった
- 判断基準を把握できなかった
- 社内説明の材料が不足した
- 費用対効果を示せなかった
- 運用・安全面の不安を解消できなかった
- 競合が要件整理の段階から入っていた
- 価格に対する価値が不足した
各分類に、次回の確認項目と対応をひも付けます。
顧客・案件管理と営業知識をつなぐ
案件ごとに情報を残しても、次の営業が探せなければ使われません。
業界、課題、関係者、判断基準、失注理由、提案資料をつなぎ、似た案件を検索できるようにします。
次の商談前に、同じ業界で誰が意思決定へ関わり、どこで止まり、何が選定理由になったかを確認します。
売上と顧客情報を会社の学習へ変える考え方は、データを会社の学習装置に変える記事でも書いています。
商談数以外に見る数字
- 購買段階ごとの案件数
- 重要関係者を把握できた案件の割合
- 次の行動と日付がある案件の割合
- 要件整理前から接点を持てた案件の割合
- 失注理由を具体的に取れた割合
- 理由別の受注率
- 提案から決定までの日数
商談数が増えても、情報収集だけの案件ばかりなら売上には近づきません。
顧客の購買が前へ進んでいるかを見ます。
失注を、営業担当者の感想で終わらせない
法人営業の結果は、提案書と価格だけで決まりません。
顧客社内の関係者、購買段階、判断基準、承認手順、担当者が説明しやすいかまで影響します。
失注理由ではなく、顧客がどう決めたかを記録する。
それが分かれば、値下げ以外の改善ができます。次の案件では、誰へ会い、何を確認し、どんな資料を用意するかを変えられます。
Beekleにご相談ください Beekleでは、AI活用や業務システム開発について、作るものの整理、費用感、進め方まで一緒に確認します。まだ曖昧な段階でも、最初に何を決めればよいかから相談できます。参考資料
- 高橋浩一『法人営業 勝ちパターン大全』翔泳社