損益表では利益が出ている。
でも、会社の口座残高は少ない。
経営者からすると、かなり違和感のある状態です。売上もある。赤字でもない。それなのに、給与や外注費の支払いが近づくと不安になります。
これは会計の利益と、実際に支払いへ使える現金の動きが違うためです。
利益があることは重要ですが、支払日までに現金があることは別に確認する必要があります。
利益は「発生」で計算し、現金は「入出金」で動く
売上を計上した日と、顧客から入金される日は同じとは限りません。
たとえば三月に納品し、三百万円の売上と百万円の利益を計上しても、入金が五月末なら、三月と四月の支払いには使えません。
その間にも、給与、外注費、家賃、社会保険、税金などが出ていきます。
大まかには、次の二つを分けます。
利益 = 売上 − 費用
将来の現金 = 現在の現金 + 入金 − 支払い
利益が出ていても、入金より支払いが先なら、現金は一時的に減ります。
黒字でも現金が減る六つの理由
1. 売掛金が増えている
売上は増えているが、まだ入金されていない状態です。
成長している会社ほど、先に人件費や外注費が増え、入金は後になることがあります。
2. 在庫や仕掛中の仕事へ現金が移っている
商品、材料、制作途中の仕事へ現金を使っても、販売や納品が終わるまでは回収できません。
3. 外注費や仕入れを先に払っている
顧客からの入金条件より、協力会社への支払条件が早いと、案件が増えるほど必要な運転資金も増えます。
4. 税金や社会保険の支払いがある
利益が出た後に、法人税や消費税などの支払いが来ます。
売上として受け取った消費税相当額を運転資金として使うと、納付時に不足することがあります。
5. 借入金の元本返済がある
利息は費用になりますが、元本返済は損益表の費用とは別です。
利益が出ていても、返済で現金は減ります。
6. 設備や新規事業へ投資している
将来の成長に必要な投資でも、現金は先に出ます。
既存事業の資金と、新規投資に使う資金を分けて見ます。
13週間の資金繰り表を作る
月単位の予測だけでは、月末前の不足を見落とすことがあります。
そこで、直近十三週間を週単位で見ます。
表には次を置きます。
- 週初の現金残高
- 顧客別の入金予定
- 給与
- 外注費と仕入れ
- 家賃と固定費
- 税金と社会保険
- 借入返済
- 設備・開発投資
- 週末の予想残高
毎週、実績と予定の差を更新します。
十三週間なら、短期の精度を保ちながら、融資、入金交渉、支払い調整、投資延期などを考える時間も確保できます。
入金予定は、確度を分ける
受注見込みを、そのまま入金予定へ入れると危険です。
少なくとも三段階に分けます。
- 確定:請求済みで、入金日が決まっている
- 高確度:契約済みだが、請求前または日付調整中
- 見込み:提案中、商談中、契約未了
資金繰りの基準表には、原則として確定分を置きます。
高確度と見込みを加えた場合の別の予測も作り、楽観と保守を混ぜません。
顧客・案件管理と、請求・入金をつなぐ
営業管理と資金繰りが別々だと、受注した案件がいつ現金になるか分かりません。
案件ごとに、次を持ちます。
- 契約金額
- 契約日
- 納品または検収予定日
- 請求条件
- 請求予定日
- 入金予定日
- 請求済みか
- 入金済みか
- 案件の外注費と支払日
すると、「受注額」から「入金日」までたどれます。
売上、案件原価、資金繰りをつなぐ全体像は、売上は増えたのに会社にお金が残らない記事でも扱っています。
現金化を早める方法
資金繰りが苦しい時、売上を増やす以外にも改善方法があります。
- 契約時に着手金を受け取る
- 工程ごとに分割請求する
- 納品後すぐ請求する
- 検収条件を契約時に明確にする
- 請求書発行を自動化する
- 入金前に期限を通知する
- 長い支払条件を見直す
- 外注先との支払条件を合わせる
顧客との関係や業界慣行によって使えない方法もあります。
ただ、契約後に資金条件を知るのではなく、見積もりと契約の段階で確認します。
経営者へ上げる警告を決める
経営者が毎日すべての入出金を見る必要はありません。
次のような例外だけを上げます。
- 十三週間以内に現金残高が基準を下回る
- 大口入金が予定日を過ぎた
- 請求予定日を過ぎても請求されていない
- 支払条件が想定より早くなった
- 税金や返済が予測へ入っていない
- 一社の入金遅れで資金が不足する
異常が起きてから探すのではなく、予定との差で早く気づきます。
生成AIには、差の理由と対応案を整理させる
入出金予定が整理されていれば、生成AIへ次の分析をさせられます。
- 先週から現金予測が悪化した主な理由
- どの入金遅れが最も影響するか
- 投資を一か月延期した場合の残高
- 着手金を受け取る案件を増やした場合の変化
- 複数の資金不足対策の比較
ただし、生成AIの回答だけで支払い、融資、税務判断を決めません。
数字の入力ミスや会計上の扱いを確認し、必要に応じて税理士、会計士、金融機関へ相談します。
毎週確認する順番
- 実際の口座残高を反映する
- 入金と支払いの実績を反映する
- 新しい請求と支払予定を追加する
- 遅れた入金の日付を更新する
- 十三週間の最低残高を確認する
- 基準を下回る場合、対応案と期限を決める
予定を作るだけでなく、毎週更新することで予測の癖も分かります。
特定の顧客はいつも遅れる。請求書の発行が社内で止まる。営業の見込みが楽観的すぎる。こうした問題を次の契約や運用へ戻します。
利益の確認と、現金の確認を別の習慣にする
黒字でも、現金がなくなれば会社は支払いを続けられません。
逆に、一時的に赤字でも、十分な現金と回復計画があれば事業を続けられる場合があります。
受注、請求、入金、外注費、給与、税金、返済を日付でつなぐ。確定と見込みを分ける。十三週間先まで週単位で見る。
損益表で儲かっているかを確認し、資金繰り表で生き残れるかを確認する。
この二つを分けて見ると、「利益はあるのに現金がない」という状態へ早く対応できます。
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※具体的な会計、税務、融資、支払い判断は、会社の状況に応じて税理士、会計士、金融機関などの専門家へ確認してください。