仕事を任せた。でも、進みが遅い。品質も不安。顧客への影響も出そうです。
そこで社長が入る。自分で直す。案件は何とか進みます。
短期的には正しい判断です。
ただ、同じ種類の問題が起きるたびに社長が責任者へ戻ると、任せたことにはなりません。
仕事を渡しているように見えて、異常が起きた瞬間に社長が取り戻す会社になります。
私は自分の業務記録でも、任せた仕事へ問題が起きるたびに再び入っていないかを見るようにしています。自分でやれば速い仕事ほど、会社としては注意が必要だからです。
社長の巻き取りは、双方にとって学習になる
社長が問題を解決すると、社員は助かります。顧客への影響も抑えられます。
でも、この成功には別の学習も含まれます。
- 社員は「困ったら社長が直してくれる」と学ぶ
- 社長は「やはり自分でやった方が早い」と学ぶ
- 会社は「異常時の責任者は結局社長」と学ぶ
この循環が続くと、社長の問題解決能力だけが上がります。
会社の能力には変わりません。
任せ方が曖昧だと、異常時に必ず戻ってくる
委譲が失敗する原因は、本人の能力だけではありません。
次が決まっていないことがあります。
- 何を実現すればよいか
- どこまで本人が決めてよいか
- どの時点で相談するか
- 品質を何で確認するか
- 期限が遅れそうな時にどうするか
- 社長へ戻すべき例外は何か
「一旦任せる」だけでは、正常時の担当しか決まっていません。
異常時の動きまで決めて、初めて責任を渡せます。
仕事を任せる前に、五つを決める
1. 成果
作業ではなく、何が変われば完了かを決めます。
「顧客へ連絡する」ではなく、「顧客と次の打ち合わせ日が合意され、顧客・案件の管理表へ記録されている」までです。
2. 権限
本人が決めてよい範囲と、承認が必要な範囲を分けます。
金額、契約、顧客への約束、優先順位など、毎回社長へ聞く項目があるなら基準を作ります。
3. 確認時点
問題が大きくなってから見るのではなく、途中の確認時点を置きます。
開始時、方向性が決まった時、顧客へ出す前、完了時など、仕事に合った節目を決めます。
4. 例外条件
次のような場合は、本人だけで抱えず上げると決めます。
- 予算を超える
- 期限を超える
- 顧客への約束が変わる
- 契約や安全に関わる
- 過去の判断基準に当てはまらない
相談すること自体を失敗にしない方が、問題は早く上がります。
5. 完了の証拠
「終わりました」ではなく、確認できるものを残します。
顧客の返信、数値、画面、確認表、動作結果などです。
完了証拠を先に決めておくと、社長が最後に全部確認し直す必要が減ります。
社長が介入する時は、期間と出口を決める
重大な問題では、社長が入るべきです。
介入そのものを悪く扱う必要はありません。
ただし、次を決めます。
- 今回、社長が担う役割
- 元の責任者が担い続ける役割
- いつ責任を戻すか
- 再発防止として何を変えるか
- 次回は誰が判断するか
社長が介入した後、そのまま社長の仕事へ変わると、委譲は終わります。
一時対応と恒久対応を分けます。
社長が解いた内容を、判断基準へ変える
問題を解決した後に、結果だけでなく判断過程を残します。
- 何が起きたか
- なぜ起きたか
- 何を優先したか
- どの選択肢を捨てたか
- 次回はどこで気づけるか
- 誰が判断できるようにするか
判断を会社へ残す方法は、社長がいないと仕事が止まる状態を解く記事で詳しく書いています。
目的、利用場面、作業、証拠を一つにつなぐ
私たちは開発で、PM on Railsという仕組みを使っています。
何を実現したいか、誰が何をできるようにするか、どんな場面でどう動けば正しいか、何を作業し、何を確認したら完了かをつなげて管理します。
これを使えば自動的に委譲がうまくいくわけではありません。
でも、社長の頭にある完成像と、現場が実行する作業の間を見えるようにできます。途中で変わった判断も、理由と影響を残せます。
開発で完了証拠を残す方法は、AIエージェントに「動いた証拠は?」と詰めようで扱っています。
社長の巻き取りを数字にする
自分が巻き取っているかは、忙しさの感覚では分かりにくいです。
次の数字を残します。
- 委譲した仕事の数
- 社長が再び責任者になった仕事の数
- 同じ種類の問題で再介入した回数
- 介入後、元の責任者へ戻せた割合
- 社長が巻き取った時間
- 巻き取りを防ぐために仕組みへ変えた件数
単純な再介入率だけで善悪を決めません。
顧客事故や大きな損失を防ぐための介入は必要です。見るべきなのは、同じ種類の問題へ何度も戻っているかです。
問題が起きた時、答えではなく再現方法を返す
社員から相談が来た時、社長が答えを出せばその場は終わります。
次回の自立性を上げるなら、次も確認します。
- 本人は何を根拠に判断したか
- どこまでは一人で分かったか
- 足りなかった情報は何か
- 次回、どの基準があれば判断できるか
- どの仕組みを変えれば同じ相談が減るか
本人へ考えさせるだけでは足りません。
情報や権限がなかったなら、会社側を変えます。
社長が助けるたびに、次回の社長依存を減らす
社長が問題を解けることは強みです。
ただ、その強みを毎回同じ形で使うと、会社は社長の処理能力へ依存します。
成果、権限、確認時点、例外条件、完了証拠を決める。介入したら期間と出口を置く。解いた内容を次回の判断基準へ変える。
社長が入った一回を、次回は社長なしで解ける仕組みに変える。
それができれば、社長が現場へ入ることと、社長依存を強めることを分けられます。
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