仕事が無言で放置されていたので、AIに「なんで?」と聞いてみた
あるプロジェクトで進捗が止まりました。「遅れます」もない。「分かりません」もない。あとで見たら普通に止まっていました。
いや言えよ。
放っておける仕事ではなかったので、最後は自分で巻き取りました。自分でやれば終わります。実際、その方が早い。でもこれをやると、次に止まった時もまた自分がやることになります。
でも、これ何も解決してないよな。
で、結構悩みました。本人にもっとちゃんとしてもらうべきなのか。途中で確認するべきだったのか。そもそも仕事の渡し方が悪かったのか。その人に合っていない仕事を任せていたのか。
注意するだけなら簡単です。でも自分が知りたかったのは、「なんでこの事故が起きたのか」でした。なんで止まったんだろう。
そこで、本人のHEXACOの数値や認知特性をAIに入れて、仕事上でどんなことが起きそうかを分析させてみることにしました。
インシデントのことを教えていないのに、放置を当てた
ここが、自分が一番「これすごいぞ」と思ったところです。
事故そのものは、もう起きていました。自分は「この仕事が途中で止まって、そのまま放置された」という事実を知っています。
でもAIには、それを教えていません。
渡したのは、HEXACOなどの特性データです。その数値をもとに仕事上の行動を分析させたら、放っておくと仕事を途中で止めたり、そのまま残したりしやすいという仮説が出てきました。
いや、それ今起きたやつじゃん。
当時、別のチャットにも自分で「問題バッチし当ててたね」と書いています。後から記事を書くために面白くしたわけではなく、その時点で普通に「当たってる」と思っていました。
もちろん、事故が起きる前に予測したわけではありません。なので、ここを「未来を当てた」と言うのは違います。
ただ、答えを教えていないのに、性格の数値から実際に起きていた問題とかなり近い仮説が出た。
ここで初めて、「これ、未来の仕事でも先に出しておいたら使えるんじゃないか」と思いました。
まず、性格をどう見るか
性格診断というとMBTIが有名ですが、今回使ったのはHEXACOという別の性格検査です。Beekleはクライアントでも自社内のものでもちょいちょい使うのですが、どういうやつかと言いますと
MBTIは、日常では「16タイプ」のように、人をタイプとして理解する使われ方が多いです。一方、Big Fiveは、外向性や勤勉さなどを5つの軸で見ます。「このタイプです」ではなく、それぞれが高いか低いかを見る感じです。
HEXACOも同じく、性格を複数の軸で見ます。ただし6軸です。Big Fiveに単純に1本だけ足したものではありませんが、分かりやすい違いの一つが、「正直さ・謙虚さ」という軸が独立していることです。
ここは日本語がちょっとややこしいです。Big Fiveにも「誠実性」と訳される軸がありますが、これは勤勉さ、計画性、自制心のような話です。HEXACOの「正直さ・謙虚さ」はそれとは別で、自分の利益のために人を利用しやすいか、特別扱いや地位を強く求めるかといった傾向も含めて見ます。
ざっくり言えば、MBTIはタイプ、Big Fiveは5つの軸、HEXACOは6つの軸です。
でも、診断名を覚えることが目的ではありません。大事なのは、その人と仕事のどこが噛み合わないかです。
HEXACOの数字を、仕事の文脈に当てはめる
HEXACOは「あなたはこのタイプです」と一つの答えが出るものではなく、いろいろな性格特性が連続した数値で出ます。
不安を感じやすいか。人前で臆せず動けるか。人とぶつかった時にどれくらい我慢できるか。決まったルールを守る方か。勤勉か。新しいものを考えるのが好きか。そういう特性がそれぞれ別の数値として出てきます。
数字を一つずつ見れば意味は分かります。でも、その組み合わせが実際の仕事でどう出るのかまで読むとなると、急に大変になります。
たとえば、「新規企画を一人で任せたら?」「締切が一か月先で途中確認がなかったら?」「毎日同じ手順を正確に回す仕事なら?」「顧客から強く反論されたら?」「強いプレッシャーがかかったら?」。状況が変わるたびに、同じ数値をもう一度読み直す必要があります。
この考え方自体は、心理学の考え方とも合っています。2025年に発表された仕事の成果と性格に関するレビューでも、性格特性だけでなく、置かれた状況との相互作用を見ることが重要だと整理されています(Pletzer & Abrahams, 2025)。
そこでAIにHEXACOの数値を渡して、いろんな仕事の状況をぶつけます。
「この人に締切の遠い仕事を一人で任せたら?」「途中確認がなかったら?」「顧客と揉めたら?」「ゼロから企画を考えさせたら?」という感じで、文脈を変えながら行動の仮説を出してもらう。
性格診断の数字を読むためというより、その数字を現実のいろんな場面へ当てはめるためにAIを使っています。
性格だけでは足りないので、頭の使い方も見る
ただ、性格だけで仕事の事故まで見るには少し粗いです。同じ性格でも、情報の扱い方は人によって結構違います。
口頭で聞いた方が入りやすい人もいれば、文章や図で見た方が楽な人もいます。複数の条件を同時に頭へ置くのが得意な人もいれば、一つずつ処理した方が力を出しやすい人もいます。
自分の中では、性格は「どう動きやすいか」、認知特性は「どう頭を使いやすいか」に近いです。
弊社では、この認知特性を見る簡易的な方法として本田式というものも使っています。本当は、第三者と一緒に受ける正式な知能検査まで入れてみたいです。その方が認知の特徴をもっと直接見られるかもしれない。
ただ、それだと誰でも今日試せる方法ではなくなります。なので今回は、まず自分で取りやすい性格検査と簡易的な認知特性、それに仕事の条件を組み合わせています。
性格を見る。頭の使い方を見る。最後に仕事の渡し方を見る。
この順番で重ねると、「この人はダメ」ではなく、「この条件だと詰まりそう」という仮説にしやすくなります。
別の友達でも、知らない過去までかなり重なった
別の友達でも試したら、かなり分かりやすかったです。ゼロから自由に企画を考える仕事がかなり苦手な友達がいて、以前いたコンサル会社でもそこがうまく噛み合わず、最終的にはクビになっています。
ただし、AIにはその話を教えていませんでした。コンサル会社をクビになったことも、ゼロから考える仕事で苦戦していたことも入れていません。
渡したのは、性格と認知特性のデータです。
するとAIから、「抽象的な発想をたくさん求められる場面では生産性が上がりにくいかもしれない」「既存の枠組みや過去の方法に寄りやすいかもしれない」「自由度の高い企画では着手が遅れやすいかもしれない」といった仮説が出ました。
さらに、発想を求められる会議では沈黙が増えそう、抽象的な課題だと動き出すまで時間がかかりそう、最初に型や例を渡した方が動きやすそう、みたいなところまで出てきました。
で、本人に見せたら、
「AIが俺の生活を監視してるのか??」
と言われました。
生活は見ていません。見たくもありません。行動履歴も渡していません。それなのに、データだけから出した「こういう場面でこうなりそう」が、実際の過去とかなり重なった。
いや、そこまで出るのか。
最初のタスク放置といい、この友達のケースといい、答えを教えていないのに既知の過去と重なることが続きました。
これなら、次は事故が起きる前に仮説を固定しておけば、本当に未来の行動をどこまで捉えられるか試せます。
実際にAIへ何を渡したか
やっていることはそんなに大げさではありません。AIへ渡したのは大きく3種類です。
一つ目は、HEXACOの結果です。二つ目は、認知特性です。三つ目は、仕事そのものの条件です。
仕事側では、何をお願いしているのか、期限はいつか、途中確認はあるか、指示は口頭なのか文章なのか、途中で条件が増えるか、他の仕事が割り込むか、一人で考える時間が長いか、といった情報を見ました。
そのうえでAIには「この人の特徴とこの仕事を組み合わせると、どこで止まりそうか」「本人の性格以外に、仕事の渡し方や環境で事故が起きそうな場所はないか」「同じ仕事を渡すなら何を変えた方がいいか」を出させました。
当時使った正確な指示文までは残っていないので、ここは確認できる入力項目と検証の流れだけを書いています。
ポイントは、「営業向きです」「企画向きです」みたいな大きい判定をさせないことです。そこまで大きくまとめると、仕事の渡し方までは変えられません。
「締切を遠く置いたらどうなるか」「途中確認を入れなかったらどうなるか」「ゼロから一人で考えさせたらどうなるか」くらいまで落とします。
ここまで具体的にすると、性格診断が人事評価ではなく、仕事の設計に使えるようになります。
次は、事故が起きる前に予想を保存した
そこで別のケースでは、結果が出る前に予想を保存しました。
「この条件だと止まりそう」「ここはむしろ強そう」「こう渡すと事故が起きそう」と先に出しておいて、あとから実際の仕事の記録と比べます。
判定は単純です。予想して起きたもの。予想したけど起きなかったもの。予想していないのに起きたもの。この3つに分けます。
実際、当たるものもあります。外れるものもあります。
そりゃそうでしょうな。
人の行動は性格だけで決まりません。その日の忙しさもあるし、経験もあるし、一緒に働く人でも変わります。だから「この人は絶対こうする」と言うためのものではないです。
ただ、「ここ事故りそうだから先に見ておこう」くらいなら、仕事の設計にはかなり使える気がしています。
当たったからといって、本人だけの問題ではない
ここは結構大事です。AIが「この人はこういう条件で止まりやすそう」と当てたからといって、「じゃあ本人が悪い」で終わる話ではありません。
最初に放置されていた仕事も、締切の置き方はどうだったか。途中確認はあったか。指示は文章で残っていたか。条件は途中で増えなかったか。他の仕事が割り込んでいなかったか。その人の特徴と、仕事の渡し方は噛み合っていたか。
同じ人でも、仕事の条件が変われば行動は変わります。
なので見たいのは、「この人は放置する人です」ではありません。
この人を、この条件に置くと、放置が起きやすくなるかもしれない。
ここまで落とせれば、変える場所が見えてきます。
結局一番変えやすかったのは人じゃなくて仕事だった
ここまでやって、一番大きかったのは「この人の弱みが分かった」ことではありませんでした。
仕事の渡し方を変えられることでした。
たとえば、締切が遠くて途中確認がないと止まりやすそうなら、「もっと頑張って」ではなく途中確認を一回入れる。最初の一歩を小さくする。次に何をやるかを明確にする。止まったら分かるようにする。
そっちの方が普通に早いです。
人間の性格を変えるのは大変です。でも仕事の置き方は、こっちで変えられます。
最初、自分は仕事を放置されてかなり悩みました。最後は自分で巻き取って、その日は終わった。でも誰かが止めるたびに自分が拾っていたら、ずっと同じです。
俺が強くなるだけじゃん。
会社が強くなってない。
結局また俺がやる。今回どうにかしたかったのは、人を当てることより、こっちでした。
人を雑に置いて、事故ったら本人のせい、は違う気がする
もちろん、性格や認知特性だけで人を決めつけるつもりはありません。実際の行動は、環境や役割、経験で普通に変わります。
だから、見ているのは「この人はこういう人です」ではなく、「こういう条件なら詰まりやすいかもしれない」という仮説です。
でも逆に、何も見ずに「この人たぶんいけるでしょ」で仕事を振るのもかなり雑だと思います。
事故ったあとに本人へ「もっと頑張って」で終わるなら、たぶん仕事の設計側にもやれることが残っています。
本人は苦手な仕事で無駄に消耗しない。任せる側も毎回巻き取らなくていい。会社も同じ事故を繰り返さない。
AIとデータって、人を監視したり点数を付けたりする方向にも使えます。でも、使い方はそれだけじゃないと思っています。
この人はどんな仕事なら力を出しやすいか。どう渡したら止まりにくいか。先に事故が起きそうなところを見て、仕事の方を変える。
AIとデータを使えば、こういうふうに、みんながちょっと幸せになる使い方もできます。
俺はこっちの方がいいと思う。
試してみたい方へ
弊社では、この考え方を「ミスマッチ避けるくん」という無料サービスにも入れています。HEXACOで性格の凸凹を見たうえで、採用や配置のズレだけでなく、仕事上で起こりやすそうな事故やつまずきも見られるようにしています。結構こっちはがっつり仕組み化してあります。
https://www.mismatchsakerukun.com/
自分で試すなら、HEXACOの結果と仕事の条件をAIに入れて、「この人がこの仕事をやるとしたら、どこで詰まりそう?」と聞くだけでも始められます。
ただ、出てきた答えをそのまま人事評価には使わない方がいいと思います。仮説として出して、実際の仕事と照らす。そのくらいがちょうどいいです。ただ何も知ろうとしないよりはマシかと思われます。
こういうAIを作りたい方へ
「こういうAIを自社でも作ってみたい」「自社の業務データと組み合わせて、仕事の事故やつまずきを予測したい」といった相談があれば、Beekleにご相談ください。
Beekleの生成AI受託開発 「何にAIを使うべきか」の整理から、動くプロトタイプでの検証、現場で使われる本番運用まで。初期費用0円で試せるゼロスタート開発にも対応しています。 Beekleにご相談ください Beekleでは、AI活用や業務システム開発について、作るものの整理、費用感、進め方まで一緒に確認します。まだ曖昧な段階でも、最初に何を決めればよいかから相談できます。